2012年2月25日土曜日

最適配置問題

タイトルをみて,何か数学の最適化問題みたいな話かな?なんて思った人…残念でした。

今日はもっとドロ臭い話。まぁ,大切な話ではあるわけだけど。
若干,物議を醸すことにはなるだろうなぁ,とは思うが,
ウチの学生たちへのメッセージにもなるだろうから,ボクの思うところを素直に書きます。
学生たちには,いささか酷なことを言うような内容にもなるので,心して読んでください。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

さて,今,ウチの研究室では来年度の卒研生の配属を行なっている。
「行なっている」ってのが微妙な言い回しで,通常,こんなのスパッと決まるべきものなんだが,
まぁ,ちょっといろいろな事情があって難航している。

ウチの学科は,1 つの研究室を複数の教員で運営していて,
全体で 3 つの大きな研究室からなっている。僕は他の 2 人の先生と一緒に
情報通信研究室」を運営している。
さて,卒研生(今の 4 年生,4 月からの 5 年生ね)を配属するに当たり,
誰が 3 つの研究室のうちのどこに行くか,は既に決まっている。
実は難航しているのは,研究室内で,
僕を含む 3 名の教員の誰が直接の指導教員となるのか,という部分。

一応,学生がモチベーションを高く持って研究に当たれるように,と,
学生の希望を取って,できるだけそれに沿って担当を決めるようにはしている。
ところが,その「希望」がかなり極端に偏ってしまっているというわけだ。

まぁ,こんな事情,今回が初めてではないし,
学生も教員も全員が 100% 満足するような最適解なんて,
一般的には望むべくもないってのは常識的に考えるとわかる。
ただ,こちらとしては学生たちの意向をできるだけ汲んであげようという思いがあるし,
特に,希望通りに行かなかった学生に対しては,配属,選考のプロセスや
その理由について公明正大に公表できるよう,透明性を保つべきであろうとも思う。
そのために学生一人一人を面談して,何に関心があるか,
なんてことをヒアリングもしたわけだが,なかなかうまくいかない。
まぁ,いずれにせよ,何らかの形で来週には決着を付けたいと思っている。

だけどだよ。

よくよく考えると,何でこんなことで苦労しなくちゃいけないの?
と思うんだよなぁ。

確かに,研究室選びにはいろいろな要因がある。
例えば,ハードウェアが得意な学生は,そういうのが活かせるところに
回してあげたいようにも思うし,
就職希望の学生には,ちょっと実践的な研究テーマを,
進学希望の学生で,数学が得意だったら,少し理論的なテーマを,
とか,そういうのは若干はある。
それに,高専には5年間の本科の上に 2年間の専攻科があって,
専攻科への進学を希望する学生は3年間同じ研究室で研究を続けることが
できるわけなので,それを考慮に入れた配属を考えることも少なくない。

ただ,例えば,そういう専攻科とか,大学でも大学院の修士なんかの
場合にはそれなりの適性を考慮することはあるだろうけれども,
本科の卒研で,そこまでナイーヴに考える必然性がどのくらいあるかは,
少し疑問に感じるんだよね。

教育的なことを考えると,いろいろなテーマに触れておくことは
視野を広げる意味で重要だし,社会に出れば,
自分が望む仕事ばかりできるわけではない。
むしろそうではないことの方が多いとも言える。
当初 100% 自分の望むところではなかったけれども,
その中でも自分なりにおもしろさややりがいを見つけて努力する,
ってのは,一種の人生経験というか,社会勉強でしょうとも言えるだろう。

高専の卒業研究で何をやったかで,人生が決まるわけではないし,
まだ 20 歳そこそこで,「自分はこっちの方面以外には進みたくない」とか,
このテーマ以外は考えられない」とか,そういうこと言われてもなぁ…と思うわけ。
それに,学生には失礼な言い方にはなるのかもしれないが,
どこまで理解して,「この研究がやりたい」と言ってるのか,ってこともある。

プロ野球のドラフト会議じゃないんだからさ。
(まぁ,ドラフトでも,そこまでゴネなくても…と思うことは少なくないけど)

というわけで,学生の中には人生の大きな岐路に立っている,
というような深刻な選択だと考えている者も少なくないようだけど,
それほどのものかねぇ?というのがボクの率直な印象だ。

逆に教員としての我々の立場からすると,
自分たちの好みや都合で学生を選ぶことはできない。
というか,学生の選り好みなんて絶対にしてはいけない。
やって来た学生は,粛々と受け入れるべきで,
その中で,学生個々の能力や意向を理解した上で,
自分の守備範囲の中で適切なテーマを設定することが要求されるし,
そこんとこがこちらとしての「資質」というものなんだろう。

まぁ,そうは言っても,集団として平均では個人の満足度の高い方へ
結論を導くことがベターであることは異論がないだろうから,
最終的にはそういう方向で軟着陸させようとは思っているわけだけれども,
学生には,

それほど深刻な問題かなぁ?というボク個人の思い

 と

学生一人一人の顔を思い浮かべながら,いかに僕らが頭を悩ませているか

ということは分かってほしいなぁ,と考えているわけ。


今まで僕が教えてきた学生たちが,ボクのことをどう考えていたかは
キチンと聞いたことないんで分からないけれども,
少なくとも,自分が直接研究指導する学生との間には
それなりの信頼関係を築きたいとは考えている。
卒業してからも,時々顔を見せてくれたり,
いろいろな形でコミュニケーションがとれている人達も多いから,
総体的にはそれなりにうまくやって来れたのかな?とは思うしね。
もちろん,研究室が違ったって,ある種の信頼関係を保つことは当然だけどね。

そもそも卒業研究の場が,知識や技術を磨いたり,
純粋に学問を追求したりするだけでなく,
そういう人間関係の訓練をすべき場でもあるとも言えるからね。
社会に出る前に,心を鍛える機会でもあるわけよね。

ここんとこ,大事だと思うんだよね。

………

というわけで,来週には何らかの形で決着をつけるけれども,
どういう形になっても,以上に書いたようなボクの思いは
少しは分かってほしいなぁ,と思います。


何か,最初はもっとキツイこと書こうと思って
「学生諸君,心して聞け」みたいな感じにしようと思ってたのに,
ぐだぐだソフトランディングしたいってのが
見え見えな文章になった感もあるな。

我ながら,まだまだ修行が足らんね。

0 件のコメント:

コメントを投稿