2011年5月29日日曜日

割り算

昨日は,娘の小学校の授業公開だった。ウチの子は 2 年生だが,そこだけでなく,全校の授業が観られるということで,5 年生の算数の授業も見学。なぜかというと,お題が

小数の割り算

だったから。今どきの小学校でどういう風に教えているのか,少し興味があった。

結論としては,すこしがっかり。何ががっかりって,今の小学校のカリキュラムでは,小数や分数のかけ算,割り算を 4, 5 年生で教えた後,6 年生で「」を教えている。でも,「割り算」と「」って本質的に同じものだから,これは一緒に教えた方が圧倒的にわかりやすい。

例えば,昨日の授業で取り上げた問題は次のようなものだ。

2.5m で 300 円のリボンがある。
1m では値段はいくらになるだろうか。

で,単位長さの値段を求めるんだから,300 を 2.5 で割ればよい,というところまでは,前回の授業までで終わっていたらしく,昨日は具体的な計算方法について学習していた。

これが疑問。例えば次のような感じだ。300 を 2.5 で割るのは難しいので,まず,300 を 25 で割ってみる。

300 ÷ 25 = 12

となる。ところが,これだと 2.5m を 25 で割ってしまっているので,0.1m の値段を求めたことになってしまう。だから,1m の値段にするために,答えを 10 倍しよう,すると答えは 120 円だと教えていた。(この時点では必ずしも悪くない。)

問題は授業の最後,結論のところで,

小数で割るときは,「割る数」が整数になるように
「割る数」を10 倍,100 倍などして計算し,
出た答えを,同じだけ 10 倍,100 倍などすればいい,

だと…うーん,そのテクニックを教えることに何の意味があるのだ??

そうじゃないだろ。

そもそも文章題から「単位長さ」を求める,という話になっているにもかかわらず,「」の話が出てこないことがあまりにも不自然だ。

初めにも書いたが,割り算と比は本質的に深い関係にある。たとえば,

「A ÷ B」 という割り算は
「A : B」 という比を 「□ : 1」 にした場合の □ の部分を求める

ことに他ならないわけだ。そう考えれば,上の 300 ÷ 2.5 の問題は,300 : 2.5 で 2.5 の部分を何とか 「1」 にするように操作するだけでいい。これはやり方に個人差が出てもいいだろう。例えば,
  • 授業でやったように,2.5 を整数にするために全体を 10 倍して,3000 : 25 として,その後,全体を 25 で割れば,120:1 になる。
  • あるいは,2.5 を整数にするならば,単に全体を 2 倍して 600:5 として,全体を 5 で割って、やはり 120:1 が求まる。
  • さらには,300:2.5 の全体を 5 で割って,60:0.5 とした後に,全体を 2 倍して 120:1 とすることもできるだろう。
こっちの方が,ずっと楽だし,自然だと思うんだけどなぁ。

そもそも,割り算,分数,比が同じものだとすれば,なぜ,「割る数」の 2.5 を 10 倍した時点で,「割られる数」の 300 の方をこそ 10 倍しないのだ? これはまさに「比」に対して行なうことのできる操作だし,分数であれば,分母,分子の両方を 10 倍することに他ならない。約分をする話ともつながる。出てきた答えを 10 倍するって,何だよ?

我が国の初等教育は本当にこれでいいのでしょうか??

ちなみに,こないだの金曜日,僕はウチの 3 年生に行なっている「確率・統計」の授業で「条件つき確率」に関する内容を教えた。条件つき確率とは,ある事象 A が起こったという条件の下で,別の事象 B が起こる確率のことをいう。例えば,次のような時に出てくる。

当たりが 3 本,ハズレが 7 本入っているクジから続けて何本か引き,
引いた後にクジを戻さないとする。
このとき,1 回目に当たりが出たという条件の下で, 
2 回目に当たりが出る確率は 2/9 になる。
一方,1回目がハズレだった条件の下では,
2 回目に当たる確率は 3/9 = 1/3 になる。

同じように「2 回目に当たる確率」であっても,条件によって,確率が変わるわけだ。

で,この条件つき確率,A と B が同時に起こる確率 P(A∩B) と A が起こる確率 P(A) を用いて,

P(B | A) = P(A∩B) / P(A)

と定義される。これ,実は分数の割り算が比だと考えると,すごくスッキリする。つまり,条件つき確率というのは,

条件 A の起こる確率 P(A) を 1 だと考えたときに,
そのうち,B が起こる確率が何%か

を考えることに他ならないのだ。だから,条件 A の下で B が起こる確率と B が起こらない確率を足すと 1 になる。

割り算は,割る方の数を 1 とした時の比を求める問題なのだ。

どう? スッキリしませんか?

2 件のコメント:

  1. まさに同感で、さっそくこれを学校の先生に送りつけましょうw

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  2. 先生に送りつける前に,学習指導要領 (bot+human) とかいうアカウントから twitter がフォローされました。human からなんか応答あるかなぁ…

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