2009年11月22日日曜日

年経れば…

今日は映画を見ました。ヨメと子供は子供向けの映画を見ている一方で,僕は一人でタランティーノの新作「イングロリアス・バスターズ」を見ました。こういうことができるのはシネコンのいいとこです。悪いとこばかりではないね。
さて,で,映画の方はどうかというと.....ひと言で言えば,タランティーノも大人になったなぁ,という印象です。まぁ,パルプ・フィクションから15年,その間にキル・ビルなんかも撮っていたけど,いまだに僕にとって彼のベストはパルプ・フィクション。その15年の歳月を感じさせる出来でした。良くできた作品で,欧米で評価が高いのもよくわかる。その一方で,15年前当時からの彼の熱狂的なファン,特に,パルプ~やキル・ビルなんかを好きな層には物足りないのかもしれません。ただ,僕はそこが彼の成長だと思いますね。
暴力描写が多いこと,登場人物が自らの考えをトウトウと述べる長いセリフが多いこと,そして,何よりも,彼自身が愛する過去の映画へのオマージュがいたるところに隠されていること....この辺りは,昔から何ら変わることのない彼の作風としてそのまま残っています。じゃ,僕がどこに年月を感じたのか??
まず,一つは,15年前当時に比べ,ストーリーテリングにおいて,いわゆるスタンダードな映画文法を踏襲するようになっていることです。昔は,やんちゃくちゃで,文法なんて無視,俺がやりたいようにやるんだ的なカットやつなぎが多かったけれど,この作品はそこまでハチャメチャじゃないし,他の監督が撮っても同じようなカットや編集をするだろうなぁ,と思わせるところが多くありました。
その二。笑いの質が微妙に変わったと思いました。昔はもっと「しょーがねぇなぁ」的な笑いや少し下品な笑いが多かったし,明らかに笑わせようとしていることが誰に目にも明らかだった。しかし,今作では,何というか,いわゆるオフビートな笑いっていうんですかね? 例えばコーエン兄弟みたいな。そんな笑いが多かったように感じました。僕はおかしくて笑うシーンがいくつもあったけれど,劇場ではあんまり他の人は笑ってなかったなぁ。残虐なシーンも多いから,笑っていいのかどうかわからない人もいたかもね。いや,笑っていいんだと思うよ。この映画は。ばかばかしいシーンも多いし,歴史なんて無視しているしさ。
15年前の当時,彼の作風をヒップホップに例える人が多かったけれど,ヒップホップもこの15年の間に進化してきました。それと同じように,彼の作風も進化してきたと考えるのが妥当なのかもしれない。昔から彼の作品を熱狂的に愛してきた人たちだけではなく,より目の肥えた人々にも見て耐えられる作品に仕上がっているように思いますね。例えば,ヒップホップの一つの進化形として,ブラック・アイド・ピーズあたりが世代を超えて評価されていることと似ているのかもしれない。
いろんな人が雑誌やネットで既に書いているけど,確かに,この映画で一番評価されるべきはクリストフ・ヴォルツの好演,そしてメラニー・ロランの美しさ。そして,ブラッド・ピットのキャラがもう一つ物足りない,もっと弾けていいというのにも僕は同意します。それにラスト近くの映画館炎上のシーン,そのときスクリーンに映る....この辺りは身震いするくらい良かった!! その一方で,多くの人がタランティーノの演出が物足りないような評を書いているけれど,僕はそうは思わない。彼も僕らと一緒に年をとったのだ。年を重ねることは悪いことではない。20代や30代で撮った「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」なんかと,今,40代で彼が撮るものとが同じであるとは限らない。違っていて当然なんだと思う。だけど,それは悪い意味ではなく,いい意味で彼が年を重ねてきたということなんだと思うんだよね。
まぁ,見ているこっちも同じように年をとっているわけだから,映画の見方が変わってきたのかも知れないけれど,15年前のやんちゃくちゃで未熟だけど弾けていた作風を今の彼に求めるべきではないという気がする。そういう映画は今の20代や30代の奴らが撮ればいいんだよ。というわけで,この作品,僕みたいなオトナコドモな映画ファンにはお薦めです。R-15だからホントのコドモにはお薦めできないけど:-P
しかし,前にウチの学生に「『パルプ・フィクション』って映画知ってる?」って聞いたら,一人も知らなくてショックでした。そんな昔かよ.....まぁ,でも,今20歳の彼らが15年前ってことは5歳。そんとき,いくら話題になってたって,R指定の映画を知らなくて当然か.....でも,後追いで知っててもいいだろぉ。これ読んで興味もった学生は一度見てみたらいいよ。もし良ければDVD貸すよぉ。

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